Kenの漫画読み日記。

餅賢次の新旧漫画情報と懐古(郷愁)他雑感

●漫画・・ 「中春こまわり君」 ~ 「がきデカ」 ・・・(3)

mochi-kenji

 


 小学館ビッグコミック06年6月10日号=11号、掲載3部作完結編、「中春こまわり君」ジュンの巻、後編。大反響、禁断の3部作、ついに完結!、なんだそうです。2004年に25年ぶりに、ビッグコミック誌上で2回分載にて復活した、大人になったこまわり君。今回はその2年後の短期集中連載の、40歳こまわり君の、いよいよ最終回。でも、ページ終わりには、「次に会えるのは年末の予定です!」の一文が。おお、まだまだ続くぞ!こまわり君ワールド。昭和最強のギャグ漫画、と呼ばれる山上たつひこギャグワールドが復活して、不滅である、という事は嬉しい限りです。さて今号のお話展開は‥。



 シュールなギャグワールドが続いていますが、40歳になっている不幸のどん底ジュンちゃんの、元夫で今内縁(?)の性悪男の愛人というか、若い女、この若い女の義兄が、栃の嵐の孫の栃の光の小料理屋で働く板前、危険な土佐犬。土佐犬の襲撃を恐れる元夫の性悪男は、こまわり君と西城君に助けを求める。昔、西城の父の小説家のトコへ原稿を取りに来ていた白熊書房の編集者の息子、南極タクシーの課長の白熊。こまわりの案じた一計は、狂猛になっている土佐犬に、白熊を噛み合わせる事であった…。


 という、相当シュールな展開のお話です。何か、もう、ネタもストーリーも全部バラして行っちゃってますけど、サラリーマンの白熊さんは弱いです。最終的に勝利するのは、「アフリカ象が好き!」変身を遂げた、こまわり君です。何か訳解らん世界ですけど。



 世間のGWに合わせて、もしかしたらパチンコ新型機CR新がきデカの登場に合わせて、こまわり君再登場、そして、その雑誌中年前期こまわり君登場に合わせて、コンビニ版と呼ぶのか、あの雑誌紙質のB6簡易単行本で選集版作品集が登場。これは、2001年夏に出た小学館マイファーストビッグ「がきデカ」夏休みは死刑編の再版です。これは勿論、少年チャンピオンコミックス全26巻からの数編選び出し作品集です。この続刊でもう一冊、近々出るようですけど。このコンビニ版の巻頭見開きに登場人物紹介が載っています。



 ○こまわり=空前絶後、笑激の少年警察官。自らの姿を変え、あらゆる手段を使って、みんなを理屈抜きの笑いの世界へ引き込む。もう誰も止めることは出来ない!?
 と、あります。確かに、こまわり君はそれまでのギャグ漫画の主人公達とは違って、シュールに即その場で変身する。芸者、オヤジ、クラブ歌手、象、熊、犬、毒虫…。あらゆる者に変身し、場面も突然変わる。基本ギャグ設定のボケとツッコミに、デフォルメ度を場面まで変えてしまう大きさで、ボケを超非常識なまでに持っていった、山上たつひこ氏の開発した新たなるギャグ形式と、シュールだが爆笑するギャグワールド。



 このコンビニ版のね、巻中に山上たつひこ氏自身のコラムがあり、元々は劇画家出身の氏の絵柄変更の苦心談が書かれています。漫画家山上たつひこ先生は、貸本時代の貸本出版の老舗であり大手だった、大阪日の丸文庫の出身です。元々は日の丸文庫の編集者であり劇画作家です。貸本世界の衰退消滅と共に雑誌世界へと移り、少年マガジンでは名作「光る風」等を残しています。劇画絵のままに近い形で描いた大人のギャグ漫画、「喜劇新思想大系」という名作がありますけど、あれはギャグ漫画というよりは、艶笑ストーリー漫画とでも呼ぶ方が相応しい作品です。あるインタビュー記事で、江口寿史氏が「山上たつひこ氏の『がきデカ』を見て、ストーリー漫画の絵でもギャグ漫画が描けるんだと発見し、プロ漫画家になる決意を固めた」、というような事を語っていましたが、その「がきデカ」の絵でさえ、山上先生は自身の劇画絵を相当壊して、もっとずっとイージィな絵柄に改良して、新しいギャグ漫画ワールド「がきデカ」の絵を誕生させた。それは、このコラム文によればかなり苦労されて生み出したもののようです。


 


 復活、山上たつひこギャグワールド、「中春こまわり君」の絵柄は、70年代後半からの「がきデカ」に比べると、劇画的というか、もう完璧ストーリー漫画の絵ですね。こまわり君自体がデフォルメされているくらいで、後はもう、劇画調にリアルっぽい絵。それでもギャグ世界をやっている。ビッグコミックという青年成人漫画誌掲載でよかった絵だと思います。少年漫画誌の絵では絶対に、ない。あそこまでないけど、ちょっと昔の笠間しろうさんの絵を思い出させる。年齢を重ねたといってもまだまだ、あの絵が枯れて来ている傾向は全くない。しっかりした構図の中で、あの「がきデカ」の絵が成熟してうまくなっているんです。これもある種洗練なのでしょう。劇画調といっても、「喜劇新思想大系」の絵とは明らかに違う。やはり成熟、洗練された絵ですね。元々うまい絵が、さらにうまく見える、大人向けの絵です。山上たつひこさんは、1990年に一度、漫画家現役引退しています。90年漫画家廃業の後、山上龍彦として、小説を執筆されている。今回の、2004年の、こまわり復活までの間は、絵的なものは何か描いたりする事は、やってたんだろうか?公的な復活はやはり、2004年「中春こまわり君」のようですねえ。



 僕は小説家山上龍彦の作品は短編を1本しか読んだ事がなく、ちょっと感想は何とも言えないです。元々漫画家であり、マルチクリエイターのみうらじゅんさんが、随分前ですが、ご自分の著作の漫画評論の中で、山上龍彦氏の長編小説「太平」について、漫画と同じ事を小説でやろうとしている‥、というふうに評していたのを読んだ記憶があります。確か、クリエイターは漫画と小説では違う事をしないといけないのに、やっている事が同じだと、批評していました。僕はこの長編はおろか、山上龍彦さんの小説はさっきもいったように、短編たった1本しか読んだ事がないので、みうらじゅんさんのいう事がはっきりとは確認、理解出来ないのですが、多分、漫画も小説も同じような作風であったという事でしょうね。僕が読んでないのは、「太平」他の山上さんの著作刊行本を近所の本屋で見掛けず終いだったからですけど。短編1本はノベルズ版の怪奇小説アンソロジーの中でです。この1本が、一応怪奇作品集本に収められた1作だったのですが、ギャグものなどでは全く無く、シリアスに書かれた小説でした。はっきり、僕にはよく解らなかった。解らないし怖さも感じなかったので、その時は僕は、これは僕の未熟さ故の(頭の悪さ故の‥)読解力の無さだからだろう‥、と思ったものです。その小説の印象は、決して、「がきデカ」執筆前後の作品の焼き直しを小説でやっているというようには思えませんでした。もう一度、みうらじゅんさんの当時の漫画評論を読み返さないと、はっきりした事がいえませんが。また、小説家山上龍彦の作品をこれ以外に知らないので、他の作風や、あるいはジャンルは全く解りません。だから、僕は小説作品に関しては何もいえません。でも、多分、山上先生ならではの独特の作風が、感じられそうな気がする。済みません、勉強不足で‥。



(※07-9/30..今頃訂正で大変申し訳ないんですけど、今頃気づきまして、上記の文中に間違いがあったので、訂正します。上記文の中で、『みうらじゅん』さんがご自分の著作の中で書いていた意見、というようなくだりがありますが、あれは『みうらじゅん』さんではありません。間違ってました。正しくは『いしかわじゅん』さんです。僕は、よく『みうらじゅん』と『いしかわじゅん』を混同して間違うんです。どちらも、漫画家の肩書きの他にもいろいろな肩書きを持ってマルチに活躍されている有名人なので、相貌は全く違うのですが、つい、よく間違ってしまいます。みうらじゅんさんといしかわじゅんさんは細かくは全然違う人、なんですけどね。上記文中の引用は、正しくは、95年刊行された、いしかわじゅん氏著作の漫画評論書籍『漫画の時間』からの、『いしかわじゅん』さんの意見からです。いえ、昨日、押入れからこの本が出て来て、パラパラやってて、あっ!と思って。今頃訂正でどうも御免なさい。) 



 今、俄かに「がきデカ」ブームがあるように思います。本当に、昭和最強のギャグ漫画ですよ。天才赤塚不二夫氏の「天才バカボン」と並ぶ、昭和ギャグ漫画界の金字塔。「がきデカ」のジュンちゃん、モモちゃんも可愛かったけれど、担任のあべ先生も好きだったなあ。当時、ジュンちゃんのモデルは風吹じゅんで、あべ先生は阿部静江だったとか。西城君のモデルは本当に西城秀樹だったのかなあ?モモちゃんのモデルは誰だったんだろう?コンビ二版選集「がきデカ」の登場人物紹介欄の、あべ先生のトコ。


 ○あべ先生=こまわりのクラスの担任。こまわりを指導すべき立場なのに、自分が止まらなくなる事しばしば。
 と、あります。キテレツ超ギャグワールドの開始のきっかけを、こまわりがポンッと作れば、何時の間にかあべ先生も脱線してしまう。こまわりの両親も一応常識人そうに見えて、よく脱線してしまっている登場人物です。



 山上先生は、1947年のお生まれですから、一応団塊世代になりますね。65年に漫画家プロデビューとありますけど、これは日の丸文庫の貸本誌「影」で短編を描いていた頃の事だろうか。この当時は勿論、ストーリー漫画ですけど、デビュー当時から各短編に鬼才の片鱗が現れていて、ストーリー構成も優れていた。しかし、先ずは今年暮れあたり、と、21世紀に入ってからも、鬼才のギャグの代表作の続編が、見れる、読める、というのはファンに取っては嬉しい限りですね。暮れのビッグコミックが今から楽しみです。往年の「がきデカ」ワールドが、大人向け漫画として、作風を少々チェンジして微妙に味付けも変え、「中春こまわり君」としてまたまた読めるし、笑えます!


 ついでに、「喜劇新思想大系」もやろうと思いましたが、もうひとつの代表的傑作「喜劇新思想大系」については、また別にお題を取って改めて書く事にします。


 














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◆(2006-05/14)「中春こまわり君」 ~ 「がきデカ」 ・・・ (2) with「喜劇新思想大系」
◆(2006-05/28)漫画・・ 「中春こまわり君」 ~ 「がきデカ」 ・・・(3)