筑紫哲也さん逝く
7日に死去したジャーナリスト筑紫哲也さんは、ニュースキャスターとして放送ジャーナリズムの確立に力を注いだ一方、商業主義に傾き肥大化したテレビの存在に危機感を抱き続けた。
2008年5月、筑紫さんはTBS系「筑紫哲也NEWS23」での活躍が評価され、08年度の日本記者クラブ賞を受賞した。抗がん剤の影響もあって、授賞式には帽子をかぶって出席。「放送ジャーナリズムが認知され、大変うれしく思います」と笑顔を見せ、持ち前のユーモアのあるスピーチで会場を沸かせた。
新聞、雑誌、テレビとメディアの第一線を渡り歩いた筑紫さん。自身を「漂流者」と表現し「テレビはジャーナリズムじゃないんじゃないかという意地悪な視線を背中に受けながらやってきた」と、テレビと共に過ごした後半生を振り返った。
常々「すごい可能性があるメディア。新聞ほど中央集権的でもない」とテレビの魅力を語りながらも、視聴率競争に明け暮れる現実には冷めた目を向けていた。テレビを身動きの取れない巨人に例え「自分の果たしている役割にどこまで危機感を持っているのか」。内部に向けた言葉はメディア界全体に鳴らした警鐘でもあった。
ジャーナリストの田原総一朗さんの話「彼は僕の一つ年下で、いわば同世代の頼りになる“戦友”だった。自分の意見を非常に鮮明に出すがゆえに、批判も多く受けていたが、彼が頑張っているのだから僕も、と思ってきた。
1カ月半ほど前にパーティーで会ったのが最後になった。相当調子が悪そうだったが『いや、頑張るよ』とニコニコと話してくれたのが印象に残っている。それだけに、大ショックだ」‥
TVで見て慣れ親しんだ人が、いつの間にか全くTVで見なくなる‥。あ、そうか、あの方はもう亡くなっていたんだ‥、と改めて気づく。そういうのは、もうここ何年もあり、寂しいものですね。
僕は報道番組は一つ時間が早い方の「ニュースステーション」派だったから、あまり「筑紫哲也ニュース23」の方は、そんなには見てはいない方だ。それでも時々、番組を見たときには、筑紫哲也さんは精力的に世界中の片隅をレポートで回っていた。それは観光で巡るような場所でなく、大変なところばかりだったように思う。安全な茶の間から、世界の辺鄙な場所、辺境の地のいろいろな出来事を、驚きと共に知った。国際ニュースのレポーターとはそういうものなんだろう。
社会人一般は、仕事に就くと、一日、仕事になる。毎日が仕事になる。たまの休日は家族サービスやつきあいで外出せねばならない。毎日のほんのわずかの開いた時間に、何気なく点けるTVで、世の中の出来事を知る。ああ、我々の社会は今、こういう問題を抱えていたんだ。世界の情勢はこうなっていたんだ。そうやって世の中の動きを知る。マクロに社会に参加する瞬間である。一般の人々が。
忙しい現代人はなかなか新聞の社説を読む時間もない。僕は、もっと、筑紫哲也さんの多事争論の話を聞いておけば良かった、と今さらながら思う。
僕は、筑紫哲也さんの書いた本を読んだことはない。だが、昔は何度か「朝日ジャーナル」を買って読んだこともあるし、多分、雑誌や週刊誌のコラムではけっこう文章を読んではいるだろう。
僕が少年、青年の時代、左翼系知識人とはヒーローだった。だからか、僕は、朝日ジャーナルの編集長を何年も勤めた人だし、筑紫哲也さんを左派系知識人(文化人)と認識していた。筑紫哲也さんは、リベラル派文化人と呼ばれるらしい。僕は、反体制・反権力という意味での左翼を、もっとソフトにしたものを左派と勝手に思っていたから、現在使われる、現代知識人らの思想領域を表わす意味の、リベラルというのは、イコール左派のことだろうと解釈していた。
僕は、田原総一郎さんという人には、確信をもった論拠があるという訳ではないが、何か疑いのような感じを持ってしまい、ちょっとウサンクササみたいなものも感じている。しかし、筑紫哲也さんや鳥越俊太郎さんには好感を持っている。筑紫さんや鳥越さんをそんなに深く知っている訳でもないけど。筑紫さんに特別影響を受け、尊敬している人、ということもないのだが、積年を通して常に好感は持っていた。
筑紫哲也さんの番組で印象深く記憶しているのは、地雷撲滅を掲げるテーマで筑紫さんが総合司会を勤めたTBSのスペシャル番組で、最後に坂本龍一が世界中のミュージシャンを集めて、自作の「ゼロ-ランドマイン」を演奏した、平和を訴えたTV特番だ。
このところ何年も何年も、昭和を作った、いろいろなジャンルのヒーローたちが、一人また一人と、現世を退場して行くのに接して来ている。リベラル派知識人の筑紫哲也さんはもう居ない。現世を退場した。寂しい。もう、TVで、世界中の要人文化人を相手に話をする筑紫さんは、明日からは見れない。時には昔のビデオで見るかも知れないが、寂しいよ。やはり。
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